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幹部育成のひとつの試みとして

みなさんこんにちは。毎年この時期はテレビや新聞で65年前の原爆や終戦、あるいは25年前の日航機墜落事故に関するテーマが多く、そういうところからも夏の盛りを感じます。

私は大学時代、二人の仲間と短期のアルバイト(力仕事をしてました)で稼いでは日本全国をクルマで文字通り全国津々浦々を走破しましたが、その中でも広島を訪れ原爆ドームや記念館を見学して、被災者の方々のお話を聞いたときの衝撃は今でも忘れられません。
当時あまりのショックに食事が喉を通らないという体験を生まれて初めて経験しました。

さて前置きが長くなりましたが、今回は人材育成に効果的な業務体験について考えてみたいと思います。と言っても科学的あるいは論理的な方法論を述べようというわけではなく、どんな小さな企業でも取り組むことができる中期的な人材育成方法についてです。

どの会社でも「これは!」という人材にはどうしても営業部門などお客様と相対する仕事をさせようとするのが自然の流れだと思います。

人事担当者時代、実際に“できる営業マン”に自分の成長についてインタビューしたところ「お客様に育ててもらった」という声が圧倒的に多かったのですが、実は当時の私にはこのことが理解(イメージ)できませんでした。

しかし今はよくわかります。

顧客課題の解決が営業の仕事だと定義すれば、これを前提に必死に仕事をし、厳しいフィードバックをお客様から頂戴したり、最後に労いの言葉をいただくことが自己の成長にとって一番の肥やしになるのでしょう。

しかしその一方で、将来自社の幹部にしようと密かに考えているスタッフには、どこかのタイミングで管理部門の仕事をやらせるべきです。

管理部門の“お客様”である社員たちはお客様ほど厳しいフィードバックも労いの言葉もかけてくれませんので、ひとつひとつの達成感は感じにくいのですが、「会社の骨格を作る」仕事は根気のいる、とても重要な仕事だからです。つまり達成感を感じるまでの期間が長く、またそれだけに達成感を感じる大きさも桁外れだと言えます。

こういう仕事で成果を上げるためには売上数字の伴う営業職と違い、「正義感」や「倫理観」あるいは「愛社精神」が必須です。同時に「視点の高さと広さ」が強く求められます。

つまりどちらも経営幹部になるための基本的な要件なのです。

実際に両方の仕事をやらせてみると優秀な営業出身者がその力を発揮できないケースも多いのですが、それは多くの場合、前出要件のいずれかが不足しているためです。

自社での導入を図る際におすすめなのは、優秀な営業マンをまずは採用部門に配属することです。なぜなら採用という仕事を通じて、人の能力や可能性というものにしっかりと向き合える良い機会になるからです。

こうした仕事を通じて視野が広がるか、はたまたそうならないかの分かれ道は本人の向上心や適性にもよるでしょう。しかしいずれにしても、対顧客コミュニケーションよりも採用や育成などを通じて社員と接するためのコミュニケーションの方がはるかに困難であるということがわかるだけでも得るものは大きいのではないかと私は考えています。

2010.08.19 樋口弘和

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