人事制度設計・組織診断 HOME > コラム > できる上司とは?
みなさんこんにちは。今年は過去最高の残暑だそうです。
私は連日汗だくでお客様のところに行っておりますが、さすがに堪えるようになってきて、歳を感じる今日この頃です。
さて、賃金改定は毎年3月ごろに一番のホットな話題であり、若干季節外れではありますが、今日はそのお話しをしたいと思います。
私は前職で「事業部人事」の奔りを担当しており、30歳前後から7年ほどHP社内で最大の事業部の人事担当をしていました。
毎年評価の季節になるとスケジュールを周知徹底し、部単位で行われる評価会議に出席し、ファシリテート(といっても事務局みたいなものでしたが)をおこない、最終評価を決定していただき、評価結果を回収。
そして人事本部への提出納期に間に合うように届ける、という仕事は当時の私にとってまさに一大イベントでした。
その後は直属の上司が部下にその結果を伝え、本人のフィードバックを集め、もって「評価プロセス全体のレビュー」をおこなうという仕事の責任者もやっていました。
本社でデータ集計をする立場であれば、個人個人の評価はまさに「数字(データ)」であり、いかに納期までに集計して、この一大イベントを無事に終わらせるか、ということに目的を置いてしがいがちです。
実はコンサルタントという立場で仕事をしていると以前の本社人事と同じ視点になりがちです。
つまり評価は記号であり、給与はただの数字にすぎないのです。
いささか極端な言い方ですが、特に大企業の人事部の難しさの一つは、こうしたことにあるのではないでしょうか。
さて、評価に伴う賃金決定のプロセスは通常会社で定められたルール(ロジック)に従います。それは仕組みとして公平感や納得感を多くの社員に求める組織としては当たり前のことです。
ですが一方では、評価と給与決定ほど個人事情を無視できない難しい決定事項もないと思います。
特に現代は高度成長時代から低成長、さらには「賃金デフレ」で給与額や雇用が長期的に減少していく可能性が大きい時代に急激に移ってきたため、働く人々のマインドセットが追いついていないのです。
私たちは根拠もなく、本当に「何となく」毎年給与はあがるものと思いがちです。あるいは扶養家族を持つ社員はすでに持家などそういう人生設計を始めている人も多いことでしょう。
ですが、もう平均的な経験、スキルの上昇が単純に労働生産性を上げるわけではないので、給与が何年もあがらない、という時代は来ています。
実際には、20歳代の昇給原資を確保するために、中高年層の原資を削ることも一般的になってきました。
こうした時代の変わり目における賃金改定のポイントは何でしょうか。
それはルールを運用する中でマネージャが部下の成果や能力だけでなく、生活や家族構成までを理解して、単なる評価に終わらず、目標設定の段階から予測される将来の賃金についてよく部下と話し合うことだと思います。
会社の労働分配率と個人の所得上昇が完全に対立する時代だからこそ、今の仕事ぶりや勉強から「将来何が得られるのか」をアドバイスすることが求められているのではないでしょうか。
明るい話ではないので、しんどい仕事だと思いますが、こういうことができるマネージャーが「できる上司」なのだと思います。
2010.09.02 樋口弘和