人事制度設計・組織診断 HOME > コラム > 続 不安定な時代に労働意欲を保ち続けるためには?

続 不安定な時代に労働意欲を保ち続けるためには?

みなさんこんにちは。10月も下旬に差し掛かり、ぐっと寒くなりましたね。
さて、今日は反響の多かった先週の続きです。

「労働意欲=やる気」と単純に捉えますと、賃金下落の状況下で全員のやる気を一律に管理するのはもう難しいのではないかと思います。
所謂一億総中流の時代は終わり、同じ会社でもその働き方は大雑把に言えば3層に分かれるのではないかと考えています。

私はこれを新幹線になぞらえて「のぞみ号」「ひかり号」「こだま号」と呼んでいます。

「のぞみ号」は会社のリーダーを目指し、貪欲かつスピーディにキャリアアップを図る層を指します。

彼らは環境に左右されることなく、常に自身の付加価値を高めていきます。
多少困難な仕事であってもやり抜こうという意欲が高く、成長スピードも速いため、早い段階で専門家あるいは組織リーダーとしての役割を担うことが多いのが特徴です。また結果として、待遇面でも高いものを求めるでしょう。

このようなのぞみ号には、常に高い目標と、結果として得られるスキルやキャリアを常に提示しながら成功を支援するマネジメントが求められます。
また評価もその志向と結果にきちんと応える必要があります。

社員全員の20%くらいがのぞみ号になれば、強い組織になるだろうなあ、と思います。

次に「ひかり号」と呼ぶ層です。彼らはのぞみ号ほどの向上心と成長スピードはないものの、キャリア開発については前向きで、それなりに責任感もあり、組織に貢献したいと考えています。

ただし、モチベーションが上下するのがのぞみ号との大きな違いです。
組織の大半はこの層の人材ですので、彼らのモチベーションが収益を左右すると言っても過言ではなく、その扱いはとても重要です。

大変なのは、この層は総人件費に占める割合も大きいため、給与の上下が企業の収益に左右されてしまう点です。

ですから以前のように給与の上昇が難しい中でいかにやる気をだしてもらうかがマネジメントの最重要課題です。ただし彼らは変化に戸惑いながらもいずれ現実を受け入れ、やりがいと収入のバランスの中で生きがいを見つけていくのではないか、と私は考えています。
日本人の強みは環境変化への従順さですので、ここでうまく発揮することを期待しています。

さて、最後は「こだま号」と呼ぶワークライフバランス重視の層です。

彼らは、賃金への固執は強くないので、あまりマネジメントを悩ませません。
しかし問題は、これまでは子供を持つ女性に多かったこのタイプが、男性からも多く出てきていることです。

しかも採用の段階でこれを把握できていることは稀で、会社と一緒に成長してくれる人材を採用したつもりが、入社後にあまり成長を志向しない人材だと発覚するケースの方が多いというところに難しさがあります。

こうした価値観の多様化は時代の流れとはいえ、企業にとってはこのような生き方を選択する人材にどうやって慣れていくのかということも当面の課題だと言えるでしょう。

2010.10.25 樋口弘和

メールでのお問い合わせはこちら